[監修]小川 真里子(東京歯科大学市川総合病院 産婦人科 准教授)

体の酸欠状態「鉄欠乏性貧血」

鉄欠乏性貧血とは

貧血とは、一言でいえば「体の酸欠状態」。血液中の酸素を運ぶ役割をするヘモグロビンが減少した状態を指します。ヘモグロビンの主な材料は鉄なので、鉄不足は貧血の要因です。貧血になると、普段以上に肺は酸素を取り入れ、心臓はたくさんの血液を送ろうと働くため、息切れや動悸、だるさなどの不調を引き起こします。

「かくれ貧血」にご用心
血液検査では貧血と判定されなくても、動悸やめまいなどの不調を感じる場合は「かくれ貧血(潜在性鉄欠乏症)」の可能性があります。初期の鉄不足の場合、肝臓や骨髄、筋肉などにストックされている「貯蔵鉄」から補われるため、貧血予備群の状態は見落とされがち。
主な症状

圧倒的に女性に多い

女性は月経で鉄を失うため鉄不足になりやすいといえます。また、ダイエットをしている女性も要注意。

右記の通りライフステージとともに貧血になる原因は変化します。それぞれのステージにおいて起こりやすい原因を知り、意識的に鉄を補給する習慣を心がけましょう。

ライフステージ別・気をつけたい貧血の原因

10~20歳頃 無理なダイエット、偏食に注意

栄養バランスの偏りや欠食など、食習慣の乱れにより貧血を起こしやすくなります。

20~45歳頃 女性ホルモンの分泌が多く、婦人科系の病気に注意

過多月経のほか、子宮筋腫、子宮内膜症など、女性ホルモンの分泌量が影響する病気によって出血が持続すると、貧血になることがあります。

妊娠・出産 妊娠~授乳期の栄養不足に注意

妊娠~授乳期は、多くの血液が必要なため、貧血を招きやすくなります。

更年期以降 ホルモンの変化、がんなどの病気に注意

女性ホルモンの乱れによる頻発月経や過多月経などから貧血になることも。また、閉経後はがんをはじめとしたさまざまな病気のリスクが高まります。

やせ過ぎ

過度なダイエットや偏食は、鉄以外にも健康を維持する上でのエネルギーや栄養素の不足を招き、心身にさまざまな不調を来します。上手に栄養をとることを意識し、適正体重のキープを目指しましょう。

毎日の食事で、
効率的に鉄をとる!

女性にとって身近な鉄欠乏性貧血の予防・改善には、まず食生活で不足している鉄を補うことが大切です。
鉄を効率よくとるために、鉄の吸収を助ける食材造血作用のある食材なども一緒にとることを心がけましょう。

食事を見直しても症状が改善しない場合には、早めにかかりつけ医に相談しよう!

鉄をとること以外にできることは?

生活習慣を見直し、体のリズムを整えましょう。

鉄欠乏性貧血を遠ざける生活習慣

睡眠・休息をとる

なんとなくだるい、疲れるなどの症状があるときは、とにかく無理をしないこと。生活リズムの乱れは貧血症状を悪化させます。疲れないうちに早め早めに休息をとり、無理のない生活を心がけましょう。

適度な運動を習慣化

有酸素運動を行うと、新陳代謝が活発になり、赤血球の生産が促進されます。ウオーキングやサイクリングなどの手軽にできる有酸素運動を習慣にしましょう。

※運動時に流す汗でも鉄を失うため、激しい運動をする人は意識して鉄の補給を心がけて。

立ちくらみと貧血は同じ?

メカニズムがまったく異なります。

貧血と立ちくらみは別物! 予防法も異なる

急に立ち上がったときなどに目の前が真っ暗になり、ふらっとして立っていられなくなる、立ちくらみ。この立ちくらみは「脳貧血(のうひんけつ)」とも呼ばれ、貧血と混同されがちです。

立ちくらみは、脳の血流量を保つため調節機能が間に合わずに、血圧が急に低下し、脳が瞬間的に酸欠状態になる一時的なもの。一方、同じ酸欠状態でも、貧血はヘモグロビンの量が少ないために酸素量が慢性的に不足するもので、脳への血液循環は正常です。このように、貧血と脳貧血は、どちらも名前に「貧血」とつきますが、まったく別のメカニズムによって起こるもので、対処法も異なります。

立ちくらみが起こりやすいのは……

しゃがんだ状態から急に立ち上がったり、寝ている状態から起き上がったりするときに起こりやすく、転倒やけがの危険もあります。次の動作に移るときにひと呼吸おき、どこかにつかまるなどして対処しましょう。しばらく横になったり、しゃがんだりしていれば数分で自然に回復します。

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