[監修]小川 真里子(東京歯科大学市川総合病院 産婦人科 准教授)
多くの女性にとって、便秘は日常的に抱える悩みの一つ。誰にでも起こり得る不調ですが、特に現役世代は女性に多いことが分かっています。
女性に便秘が多い理由には、体の構造・ホルモンの影響の他、生活習慣によるものが考えられます。
放置すると痔(じ)や免疫低下など、他の病気につながることも。また、何らかの病気により便秘が引き起こされていることもあるため、症状が続く場合には、我慢せずにかかりつけ医を受診しましょう。
女性ホルモンの一つ、黄体ホルモンは水分をため込んだり、蠕動(ぜんどう)運動を抑えたりする作用があります。
更年期に起こる女性ホルモンの減少は、脳の視床下部にも影響し、自律神経が乱れます。自律神経は腸の動きにも関わっているため、便秘を引き起こしやすくなります。
妊娠中は、黄体ホルモンの分泌が増える影響や、子宮が大きくなり腸が圧迫されるため、便秘になりやすくなります。
欠食や偏食、無理なダイエットは、腸内環境に悪影響を及ぼします。また、食事量が少ないと、便のかさと水分量が減少するので便秘の原因に。
腹筋の力が弱いといきむ力も弱く、便を押し出す力が不足します。これに加え運動不足が続くと、腹筋の衰えにつながり、便を先へと送り出す蠕動運動も不十分に。
ストレスや緊張、過労などによって自律神経のバランスが乱れていると、蠕動運動もスムーズに行えず、便秘を起こしやすくなります。
※蠕動運動…腸が伸びたり縮んだりをくり返し、消化した食べ物などの内容物を移動させる動きのこと。
●食物繊維をたっぷりと
さつまいも、ほうれん草、
わかめ、玄米、ライ麦
など
●発酵食品をとる
ヨーグルトやキムチ
など
●水分を十分に
●油分も適度にとる
●座ったまま足上げ運動
●腰回し運動
●日常の中で
ウオーキング
●排便習慣をつくる
早起きをして、排便の時間を設けるなど、排便習慣を整える工夫を。
●疲れたら無理せず休む
睡眠時間はたっぷりと。一日の中でリラックスして過ごす時間を設け、小まめにストレス発散する習慣を心がけましょう。
便秘薬や漢方薬が有効なことも。使い方を守って上手に活用を。
便秘に困ったら、市販の便秘薬に頼っていい?
有効な場合もありますが、使い方には、注意が必要です。
気軽に手に入れられる市販薬は便利ですが、間違った使い方をすると、かえってひどい便秘を招くことも。市販薬を用いる場合は、自分の症状に合った薬を選ぶことが大切です。
市販の便秘薬は大きく2つの種類に分けられます。
刺激性下剤 | 機械的下剤 | |
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特徴 |
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便秘薬は痩せることを目的に作られた薬ではありません。痩せる方法の一つとして便秘薬を飲んでも、継続しているうちに薬が効かなくなり、ひどい便秘や下痢、腹痛の他、栄養が吸収されず栄養不良に陥るケースなどもあるので、絶対にやめましょう。
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食物繊維をたくさんとれば、便秘は予防・改善できる?
とり過ぎが症状の悪化につながることも。原因や症状に合わせた対策が基本です。
食物繊維は上手にとろう
食物繊維を多く含む食材は、便秘予防や改善に役立つとされています。ただし、それが全ての便秘のタイプに当てはまる訳ではないことを知っておきましょう。まず便秘は、大きく分けて「器質性便秘」と「機能性便秘」の2つのタイプがあります。
機能性便秘の多くは、食物繊維をとるなどの生活習慣の見直しにより症状の緩和がみられますが、とり過ぎにも注意が必要です。食物繊維は水に溶ける水溶性食物繊維と、水に溶けにくい不溶性食物繊維の2種類に大別されます。便秘の人の多くは、「蠕動(ぜんどう)運動」の機能が低下していることから、便の“かさ”が大きくなり過ぎるとスムーズに進まなくなってしまうため、特に、水に溶けにくい性質を持つ不溶性の食物繊維は、とり過ぎないように気をつけることも大切です。
(多く含まれる食品)果物、繊維のやわらかい野菜(にんじんやキャベツなど)、海藻類など。
(多く含まれる食品)きのこ類、繊維のかたい野菜(ごぼう、さつまいも、たけのこなど)、豆類など。
単に便秘といっても原因はさまざま。それぞれの原因に合わせた対策が必要といえます。ひどい便秘で困っている人は、医療機関を受診し、原因や症状に合わせたアドバイスをしてもらうのもおすすめです。