[監修]小川 真里子(福島県立医科大学 ふくしま子ども・女性医療支援センター 特任教授)
たばこの煙は、私達の健康にさまざまな悪影響を及ぼします。肺がんや呼吸器疾患などの他、女性ホルモンの機能低下、出産・子育てなど、特に女性が注意すべき悪影響も。
自分自身の体と、周囲の人の影響について正しい知識を持ち、吸わない、吸わせない環境づくりを徹底しましょう。
たばこの害は、吸っている本人だけの問題ではありません。誰かが吸ったたばこの煙を吸う受動喫煙は、がんや脳卒中、虚血性心疾患などのさまざまな疾患のリスクを高めることが明らかになっています。
たばこの煙には、喫煙者が吸い込む「主流煙」、たばこから立ち上る「副流煙」があり、フィルターを通らない副流煙には、主流煙より有害物質を多く含むといわれています。
この他、受動喫煙による健康への影響により、年間1万5千人が死亡しているとの推計もあります。
自分と周囲の人の健康を守る
唯一の策は「禁煙」です。
周囲の応援が「吸いたい気持ち」に打ち勝つ原動力に。
オンライン診療や治療用アプリを使う場合も!
禁煙補助剤にはニコチン切れ
の症状をおさえる効果があり、
自力で禁煙するより成功しやす
くなるといわれています。
イライラしやすいなど、月経による不調のある時期を避けて禁煙をはじめるのも一つの策です。
◦お茶や水を飲む ◦歯磨き
◦おしゃべり ◦歩く
新型たばこは、体への影響が少ないと考える人もいますが、その安全性は証明されていません。さまざまな有害物質が含まれるという報告もありますので、新型たばこを含む禁煙が大切です。
妊婦の喫煙はダメって聞くけど……
どんな問題があるの?
妊娠中のみならず、授乳期、出産後にも、大人の喫煙によって子どもが受ける健康リスクは深刻です。
女性が妊娠中にたばこを吸うと、煙に含まれるニコチンや一酸化炭素によって赤ちゃんに十分な酸素や栄養が行き届かなくなるため、流産や早産、低出生体重児のリスクが高まります。「だったら妊娠したら禁煙すれば良い」と考える人もいるかもしれませんが、喫煙は不妊のリスクを高めることが指摘されていますので、妊娠を考えたらその時点で禁煙するのが良い選択といえます。
授乳中に母体がたばこを吸うと、赤ちゃんはニコチンの含まれた母乳を飲むことになります。その結果、赤ちゃんへの影響として不眠、下痢、嘔吐(おうと)などのニコチン中毒症状を引き起こす可能性があります。
周囲の人が吸ったたばこの煙を吸い込む「受動喫煙」も、赤ちゃんにとって深刻な影響を及ぼします。妊婦本人は吸っていなくても、吸い込んだ煙の有害物質が胎盤を通じて赤ちゃんに及び、低出生体重児、発育の遅れなどを引き起こす原因になります。また、子どもの受動喫煙も、中耳炎やぜんそく、乳幼児突然死症候群(SIDS)※などの原因になることが分かっています。
それまで元気だった赤ちゃんが、何の予兆や病歴のないまま、眠っている間に突然死亡してしまう病気です。原因の分からない病気で、窒息などの事故とは異なります。保護者が喫煙者の場合、その発症率は高まることが報告されています。
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禁煙すると、
太るのではないかと心配……
一時的な体重増加を気にし過ぎず、まずは禁煙を優先しましょう! 運動とセットで行うのもおすすめです。
体重よりも禁煙を優先
「禁煙すると太るのでは」と気にする女性も多いかもしれません。確かに、禁煙による口寂しさやイライラからつい食べ過ぎてしまい、一時的に体重が増えてしまうことは起こりがちです。しかし、ここで再びたばこに手を伸ばさず、禁煙を持続できるかどうかがポイント! 禁煙1年目は平均して2kgほど体重が増えるものの、その後は徐々に減少する傾向が見られるという研究結果があります。目先の体重変化にとらわれず、長期的に見たあなたの健康や美容へのメリットを考え、まずは体重より禁煙を優先しましょう。
禁煙は運動とセットで
禁煙と、セットで取り組んでほしいのが運動です。おすすめなのは、ウオーキングなど、うっすら汗ばむ程度の有酸素運動。有酸素運動はエネルギーを消費し体重コントロールに役立つだけでなく、禁煙後に起こるたばこへの渇望感やイライラ等の離脱症状を和らげることが分かっています。また、運動はストレスや不安の緩和にも役立つとされているので、「吸いたい」と思ったら体を動かすこともおすすめします。